頭痛専門外来
「頭痛専門外来では」

頭痛外来は、頭痛のないときに受診する

B 1ヶ月後、頭痛専門外来の再診 (H.23.04.21.)
(1) その後、頭痛はどうでした?
(2) 頭痛ダイアリー、つけました?
(3) 週末片頭痛
(4) 片頭痛は環境の変化に敏感
(5) 解説:片頭痛の遺伝子
(6) トリプタンは効きました
(7) トリプタンが効かなかった頭痛
(8) 何故、トリプタンが効かない?
(9) トリプタンの自己注射
(10) トリプタンの吸収を良くする方法
(11) 片頭痛の気配がしたら飲む
(12) 片頭痛の予防
(13) 解説:片頭痛の予防について


(1) その後、頭痛はどうでした?


「Bさん診察室2番にどうぞ」スピーカーから前回と同じ医師の声が聞こえた。
「Bさんどうぞ。奥様もそちらにお座り下さい」医師の穏やかな物言いで、Bさんの緊張がほぐれる。「Bさん、その後いかがでしたか?頭痛はどうでした?」医師が自分のことを覚えていてくれたと感じ、Bさんは嬉しかった。
「はい、3回ありました。一度はひどくて寝込みました」Bさんの答えに、医師の脳裏に不安がよぎる。薬が効かなかったのかもしれない。
「トリプタンは飲んでみました?」
「はい、良く効きました。最初の頭痛の時です」Bさんはそのことを早く伝えたかった。
「それは良かった」医師もひとまず安心した。これで話しを先に進めやすくなる。「その他の2回は効かなかったのですか?」
「2回目は頭痛がひどかったせいか、その時はだめでした。3回目はあまり強い頭痛ではなかったのでトリプタンは飲んでいません」


(2) 頭痛ダイアリー、つけました?


「頭痛ダイアリーはつけました?」医師は経過をもっと詳しく知りたい。
「はい、あまりちゃんとはつけてないんですが、これでよいですか?」Bさんは遠慮がちにダイアリーを取り出した。

「いいですよ、わかりやすい」医師は受け取った三つ折りのダイアリーを開いてざっと見たあと、そうBさんに伝えた。カレンダー方式のダイアリーに頭痛のマークがつけてあり、『脈』、『重』といった頭痛のタイプを示す添え書きもある。
「ここの『は』と書いてあるのは?」
「はい、吐き気があったときです」
Bさんの頭痛ダイアリーには、几帳面に頭痛のマーク以外にも、頭痛の程度やその症状、薬の頭文字のような記号が書かれていた。Bさんのスケジュールと思われる記載もある。

「良く書いてあるじゃないですか。Bさんの頭痛が良くわかります」患者さんがこれだけ協力的だと、診療に身の入る感じがする。「3回頭痛があって、最初の2回は週末ですね。最初は日曜の昼頃。2回目は次の土曜の朝」医師にとってはよく見るパターンである。
「ほんとだ!」Bさんは改めて、自分の頭痛が休みの日に多い事が分かった。

「3回目は水曜の午後ですね。なにか思い当たることあります?」医師の質問にBさんは少し考えてみた。
「毎週水曜の午前中は大事なミーティングがあります」Bさんの企画チームでは、週前半の仕事の進行状況を話し合うミーティングを水曜の午前中にしている。チームリーダーにとっては最も緊張するミーティングで、そこでの話し合いでチーム全体の連帯感が感じられれば安心である。
「その時は午前中に会議が無事に終わり、ほっとした時です。午後にはストレスはなかったはずです」先週のことでBさんは良く覚えていた。医師はBさんの顔を見ながら話した。「片頭痛は『ストレスから解放された時』に起こりやすいのです」医師はBさんのちょっとけげんな表情をみながら、話しを続けた。


(3) 週末片頭痛


「片頭痛はストレスの最中には起こりにくくて、逆にストレスから解放されてほっとした時に起こりやすいのが特徴です」
「ストレスは直接に頭痛とは関係ないのですか?」Bさんは意外に思った。
「片頭痛は脳に何か変化が起こったことがきっかけになると言われています」医師は前回も話したことを、繰り返す。「だから、ストレスがずっと同じように続いている最中には起こらない。ストレスがなくなった時に脳のセロトニンが同時に変化を起こし、片頭痛が始まります」
「そしたら、ホッとしなければ良いのですか?」愚問のような気がしたが、Bさんは聞いた。
「片頭痛になるのが怖くて、週末にも出勤してみたという患者さんの話しもあります。」
「それも悲惨ですね」Bさんはやはり愚問だったと思った。
「ストレスがたくさんたまり、開放された時に脳の変化も大きいわけです。早い話、日頃からストレスがたまらないようにすることで、片頭痛の誘因が減るということになります。
「なるほど、だけど、言うはやすしでしょうね」Bさんも少し頭痛のことが分かってきた気がした。


(4) 片頭痛は環境の変化に敏感


「片頭痛は環境の変化にも敏感に反応しやすいのです」
「脳のセロトニンという物質が片頭痛を起こしやすくて、そのセロトニンは環境の変化にも弱いのですね」Bさんは真剣だった。
「そのとおりです。片頭痛の起こる脳は、色々な環境の変化に反応します。例えば、女性の月経が始まる頃に片頭痛が起こりやすいのは、それまで続いていた高温期に体内でレベルの高かったエストロゲンが低下して月経が始まる。その変化に脳が敏感に反応するために片頭痛が起こりやすいと考えられます」
 Bさんの妻は片頭痛はないが、月経前には必ず生あくびが出たり、眠気におそわれたりすることがあるので、脳が女性ホルモンの変化という体内の環境変化に反応する、という医師の説明はわかる気がした。

「天候の変化、気圧の変化や湿気の変化にも、『片頭痛脳』は敏感に反応して、片頭痛を起こすことが良くあります」
「私も中学生くらいの時は天気が悪くなる前に良く頭痛が起こって、母におまえの頭痛は天気予報みたいだと言われたことがあります」
「そうなのです。患者さんの中には、東京に住んでいる人が九州に低気圧が近づくと頭痛が始まると断言する方もおられます。環境の変化や、自分の体の変化に敏感なのですね」
「私は神経質ということですか?」Bさんは、自分はそれほど敏感な人間だと思っていなかったので聞いてみた。
「脳が敏感に反応するということですから、大体は反応の良い脳ということで、悪いことはなにもありません。ただ、片頭痛が起こりやすくて、損する脳だということです」医師の説明は最近の研究で解明されている。


(5) 解説:片頭痛の遺伝子


最近の脳の研究で、片頭痛に遺伝子の異常が見つかっている。最も典型的な片頭痛といわれる家族性片麻痺性片頭痛の家系には3種類の遺伝子異常があった。いずれも脳の細胞膜の活動に関係のあるカルシウム、ナトリウム、カリウムといったイオンの動きに関連する遺伝子で、この遺伝子異常により脳の興奮性が高まる。そのために脳の一部の活動性が高まり前兆が起こることが、特殊な脳のMRI検査法で明らかにされた。
多くの病気で『体質が原因』といわれている。片頭痛の体質異常も、脳細胞の遺伝子が他の人と少し違うためであることが分かってきた。脳の科学の進歩といえる。


(6) トリプタンは効きました


 「ところで、最初の頭痛の時にトリプタンを飲んでみたのですね」医師は頭痛ダイアリーに目を戻した。
「はい、トリプタンは効きました。これは、びっくりでした。頭痛がおさまって、それもすっきりと治った感じでした。Bさんにとって、不思議なほどの効果だった。
「前兆はあったんですか?」
「ありませんでした。ただ、日曜の午前中からなんとなく生あくびが多くて、怪しいとは思っていました。そのうち、むしょうに空腹感を感じました。まだ朝食は食べていなかったんですが、それにしてもひどく低血糖な感じでした」
「そのあと、しばらくして頭痛が始まったのですね」
「そうです、いつものように首の後ろが強く凝る感じがありました。10分くらい様子をみていましたが、頭痛がなんだか前の方にも拡がってきて、本物かなって思いました」
「ダイアリーにトリプタンと書いてありますが、飲んだのはその時ですか?」
「先生がいわれたように、片頭痛が始まって早めのタイミングだと思ったのでトリプタンを飲んでみました」
「どうでした?」
「いつもだと、そこまで頭痛が進むと、どんどんひどくなって手が付けられない頭痛になるのですが、トリプタンを飲んで15分くらいしたら頭痛がスーっと引いて、その後も起こりませんでした。すごく良く効いたと思います。おどろく程でした」
「片頭痛が始まって、早めにトリプタンが飲めて良かったですね」
「はい、前触れで片頭痛のくるのがわかっていました」でも、いつもそうは行かなかったことも経験していたので、Bさんは複雑な心境だった。


(7) トリプタンが効かなかった頭痛


「先生、2回目の頭痛にはトリプタンは効きませんでした」
「次の週の土曜の朝からの頭痛ですね」医師はダイアリーを見ながらうなずいた。
「そうです。前の晩には自宅で家内と食前に缶ビールを1本づつ飲んだくらいで、そのほかは普通でした」
普通に妻とも愛し合った。予期していたように、妻もBさんの好きな淡い香水をつけていて、においには敏感なBさんにも疲れが癒されるように感じられた。体を離した後の軽い疲労感がBさんは大好きだった。いつも、妻に愛の言葉をかけ、『至福』のときだと思う。

 「翌朝、頭痛が起こったのですか?」医師が質問を続けた。
「朝の6時頃、頭痛で目を覚まされた感じです。起きたときはもう、頭全体がガンガンしていて、トイレに行こうとして起きて歩くだけでも頭に響く感じでした。まさに、片頭痛でした」
「吐き気もしました?」
「トイレで小便をしていたら目の前が白くなり、気分が悪いと思った後、2〜3回吐きました」
「Bさんが目を覚ましたときに頭痛はもう相当ひどくなっていて、吐くほどだった。その時点でトリプタンを飲んだのですね」
「ベッドに戻り、すぐトリプタンを飲みました。部屋を暗くして寝ていたのですが、薬の効果がないので、夕方にもう1錠飲んでみましたが、駄目でした」
「土曜日は1日中寝込んでいた。それは残念でした」医師の話に、Bさんは他に何か方法があったのか聞きたかった。

 自分なりに考え、Bさんはトリプタンが効かなかったのでバッファリンを2錠飲んでみたが、その効果もなかった。ただ、その夜は一晩寝たら、翌日の日曜の朝には頭痛を感じなかった。Bさんにとっては頭痛が2日間も続かなかっただけでもいつもよりはましだったが、トリプタンが2度目に飲んだときには効かなかったことはショックだった。


(8) 何故、トリプタンが効かない?


「トリプタンは効くときと効かないときがあるのですか?」Bさんはその理由が知りたかった。
「片頭痛がひどくなると、脳や体にいろいろな変化が起きて、トリプタンが効きにくい状態になることがあります。Bさんのダイアリーに、顔も痛むと書いてありますね」医師は、土曜の頭痛のマークのわきに『顔ピリピリ』と記してあるのに気づいていた。
「はい、顔の右側がピリピリと痛むようにいやな感じが続いていました。頭痛も右側がひどかったと思います」
「髪の毛をさわっても痛む感じした?」
「はい、時々感ずるのですが、頭痛がひどいときは髪をとかすと痛みが頭の奥にひびくし、手のひらがピリピリすることもあります」

 「その症状がアロディニアといわれています。片頭痛が始まって数時間すると、脳全体が痛みに過敏になって頭痛がひどくなるとともに、脳の外の顔や手も感覚が過敏になって、普段は感じない刺激が痛みに感ずる現象です」
片頭痛がすすむと脳が異常に過敏になり、もうトリプタンが効かなくなるということかとBさんは思った。
「片頭痛は脳の血管周囲に炎症が起こり、その炎症からでてくる痛み物質が片頭痛の痛みを起こします。その痛みに対して、脳内の痛み調節系の神経回路が働き、痛みに対処するためのネットワークが作られるのですが、体調によってはその過程が良い方向に働かず逆に脳全体が痛みに非常に敏感な状態になります」医師は続けた。「片頭痛は脳の血管が痛む第一段階と、その後に脳の中に痛みが蔓延する第二段階とがあります。第二段階になるとやっかいです。」
「そうなると、もうトリプタンが効かないのですか?」
「そうなのです。トリプタンは脳の血管の炎症を抑える、片頭痛の火元を消す薬です。ところが、第二段階のアロディニアが起こる頃には脳全体が痛んでいるので、トリプタンの効きが悪くなります」


(9) トリプタンの自己注射


「トリプタンは早めに飲んだ方が良いということは良くわかりましたが、土曜の頭痛のように、目が覚めて、気がついたときにはもう頭痛がひどくなっているときはどうすれば良いですか?」
「頭痛がひどくなると吐き気も強く、トリプタンを飲んでも薬が胃や腸から吸収されません。トリプタンが効かない理由のひとつです。そんなときに、トリプタンを注射するとすぐさま体内に吸収され良く効きます」
「トリプタンは注射も出来るのですか?すごいですね。でも、頭痛のときに病院に行くのはもうこりごりです」

「トリプタンの在宅自己注射が医療保険で認められています」
「自己注射って、自分で注射するんですか?」
「そう、イミグランという片頭痛の自己注射用キットがあります。糖尿病の人がインシュリンを自分で注射する話を聞いたことありますか?」
「はい、でも糖尿病は毎日決まった時間に注射するのですよね。片頭痛の場合はいつ注射すれば良いか難しいですね」
「もちろん、片頭痛であることを確認出来ることが大切で、また、注射するのはひどい頭痛で、吐き気もあるようなときです」

自分で注射できるかな?
「ノック式のボールペンのような皮下注射キットです。太ももなどにキットの先を押しつけ、ボールペンの芯を押し出すようにノックすると、キットの先から針がはじき出されて、そこからトリプタンが注入されます。1〜2秒で終わります」
「怖いですね」
「注射の仕方は覚えてしまえば簡単です。消毒の方法なども看護師さんが詳しく説明してくれます」

「自己注射はもちろん注意深くしてほしいのですが、大切なことは、その頭痛が片頭痛かどうかを自分で診断しなくては注射の意味がありません。そのためにも頭痛ダイアリーを付けておく必要があります」
「はい、確かにダイアリーを付けてみて、自分でもはじめて自分の頭痛のことがわかったような気がします」


(10) トリプタンの吸収を良くする方法


「吐き気があってトリプタンの吸収が悪かったり、頭痛がひどくなったりしたときは注射しか方法はないのですか?」
「トリプタンが胃や腸から早く吸収されて、脳の片頭痛の火元に早く届くように工夫します」
「どうするのですか?片頭痛がくるときは、ほとんどいつも吐き気も一緒に来ます」
「吐き気止めを上手に使うのがベストです。片頭痛はまず胃や腸から来ると言われています。片頭痛の人は、子供の頃から乗り物酔いになりやすい」
「はい、私もそうでした。乗り物で良く吐き気がしました」
「胃や腸は食べた物を運ぶように動くのが正常ですが、片頭痛が始まると胃や腸の動きが止まって、ひどくなると胃や腸が逆に口の方に向かって動き出し、吐き気もします」
「確かに、痛飲んだ痛み止めを錠剤ごと吐いたことがあります」

「トリプタンを飲むときは、ナウゼリン(別名:ドンペリドン)といった吐き気止めを一緒に飲むことが原則です。胃や腸の動きを良くする薬です。さすがに、吐き気が始まったあとでは、吐き気止めも腸からの吸収が悪くなります。その前に飲むことがコツです」
「その前に飲むといっても、どのタイミングか難しいですね」


(11) 片頭痛の気配がしたら飲む


「ナウゼリン(ドンペリドン)という胃や腸の働きを良くする薬を、予防薬として飲むのです」
「予防薬って、毎日飲むのですか?」
「飲むのは片頭痛の気配がしたときです。気配がしたと思ったら飲んで下さい」
「頭痛の前に気配がすることは良くあるんですが、気配がしても、実際には頭痛のこないこともあります」
「飲んだけど空振りだったという結果でも良いのです。この薬で胃や腸の動きを良くしておくと、もし片頭痛が始まってもトリプタンの吸収が良くなります」

「頭痛が3〜4日と長くなった場合はトリプタンを何錠も飲んでしまうことがあります。この期間中にナウゼリン(ドンペリドン)を1日3回飲み続けて下さい。多分、トリプタンを飲む回数が半分以下になると思います」
「気配がしたら飲む、期間限定の予防薬ということですか?」
「その通りです」Bさんは、このナウゼリン(ドンペリドン)作戦は役に立つかもしれないと思った。


(12) 片頭痛の予防


「先生のお話で、片頭痛が起こっても何とかなるかもしれないと思えるようになりました」
「自己注射もありますしね」
「ええ、それも看護師さんに教えていただいて帰ります。でも先生、しつこいようですが、片頭痛が治ることはないんですか?」
「もちろん、片頭痛の予防薬はいくつかあります。片頭痛の回数を減らしたり、起こっても程度を軽くする薬です」
「私には必要ないのですか?」
「月に2回以上片頭痛があれば、予防薬を飲むのが普通です。でもBさん、予防薬はもう2〜3ヶ月様子を見てからにしませんか。頭痛が起こっても何とかなる方法を自分のものにすることが第一歩です。頭痛がきても何とかコントロール出来ると安心ですよね。スケジュールが立てられるし、大事な仕事や行事が近づいてもあまり不安にならずにすみます」

「先生のおかげで、私の片頭痛に対する不安は半分以下になった気がします」
「それは良かった。今日は、またトリプタンと、それからナウゼリン(ドンペリドン)を少し多めに処方しておきます。ダイアリーも、またお渡しします。続けてダイアリーをつけておいて下さい」
「わかりました。有り難うございました」
「では、また拝見します。お大事に」


(13) 解説:片頭痛の予防について


 片頭痛は遺伝的体質が原因にあるため、完全に治ることはないが、片頭痛発作が起こらなくなれば悩むこともない。片頭痛の起こるのがごく稀になったり、起こってもごく軽くすむようになれば、苦労はなくなる。
 
 そういった目的で、片頭痛の予防療法が行われる。薬物療法が一般的であるが、心理療法(カウンセリングなど)、理学療法(マッサージ、体操)、鍼、電気刺激、ボトックス治療など、様々な予防法が試みられている。いずれも、予防効果のエビデンス(証拠、根拠)が報告されており、効果のあることが科学的に実証されている。しかし、いずれもオールマイティーな予防法ではない

 薬物療法は、@脳の興奮性をコントロールし、前兆を抑制する、A頭痛の原因となる神経原性炎症を弱める、B痛み調節系を常に活性化し、痛みが増幅しないようにする、といった目的で使用される。有効率50%以上の効果が期待されているのが、現状である。

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