(2) 頭痛ダイアリー、つけました?
「頭痛ダイアリーはつけました?」医師は経過をもっと詳しく知りたい。
「はい、あまりちゃんとはつけてないんですが、これでよいですか?」Bさんは遠慮がちにダイアリーを取り出した。
「いいですよ、わかりやすい」医師は受け取った三つ折りのダイアリーを開いてざっと見たあと、そうBさんに伝えた。カレンダー方式のダイアリーに頭痛のマークがつけてあり、『脈』、『重』といった頭痛のタイプを示す添え書きもある。
「ここの『は』と書いてあるのは?」
「はい、吐き気があったときです」
Bさんの頭痛ダイアリーには、几帳面に頭痛のマーク以外にも、頭痛の程度やその症状、薬の頭文字のような記号が書かれていた。Bさんのスケジュールと思われる記載もある。
「良く書いてあるじゃないですか。Bさんの頭痛が良くわかります」患者さんがこれだけ協力的だと、診療に身の入る感じがする。「3回頭痛があって、最初の2回は週末ですね。最初は日曜の昼頃。2回目は次の土曜の朝」医師にとってはよく見るパターンである。
「ほんとだ!」Bさんは改めて、
自分の頭痛が休みの日に多い事が分かった。
「3回目は水曜の午後ですね。なにか思い当たることあります?」医師の質問にBさんは少し考えてみた。
「毎週水曜の午前中は大事なミーティングがあります」Bさんの企画チームでは、週前半の仕事の進行状況を話し合うミーティングを水曜の午前中にしている。チームリーダーにとっては最も緊張するミーティングで、そこでの話し合いでチーム全体の連帯感が感じられれば安心である。
「その時は午前中に会議が無事に終わり、ほっとした時です。午後にはストレスはなかったはずです」先週のことでBさんは良く覚えていた。医師はBさんの顔を見ながら話した。「片頭痛は『ストレスから解放された時』に起こりやすいのです」医師はBさんのちょっとけげんな表情をみながら、話しを続けた。
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