頭痛専門外来

(7) トリプタンが効かなかった頭痛


「先生、2回目の頭痛にはトリプタンは効きませんでした」
「次の週の土曜の朝からの頭痛ですね」医師はダイアリーを見ながらうなずいた。
「そうです。前の晩には自宅で家内と食前に缶ビールを1本づつ飲んだくらいで、そのほかは普通でした」
普通に妻とも愛し合った。予期していたように、妻もBさんの好きな淡い香水をつけていて、においには敏感なBさんにも疲れが癒されるように感じられた。体を離した後の軽い疲労感がBさんは大好きだった。いつも、妻に愛の言葉をかけ、『至福』のときだと思う。

 「翌朝、頭痛が起こったのですか?」医師が質問を続けた。
「朝の6時頃、頭痛で目を覚まされた感じです。起きたときはもう、頭全体がガンガンしていて、トイレに行こうとして起きて歩くだけでも頭に響く感じでした。まさに、片頭痛でした」
「吐き気もしました?」
「トイレで小便をしていたら目の前が白くなり、気分が悪いと思った後、2〜3回吐きました」
「Bさんが目を覚ましたときに頭痛はもう相当ひどくなっていて、吐くほどだった。その時点でトリプタンを飲んだのですね」
「ベッドに戻り、すぐトリプタンを飲みました。部屋を暗くして寝ていたのですが、薬の効果がないので、夕方にもう1錠飲んでみましたが、駄目でした」
「土曜日は1日中寝込んでいた。それは残念でした」医師の話に、Bさんは他に何か方法があったのか聞きたかった。

 自分なりに考え、Bさんはトリプタンが効かなかったのでバッファリンを2錠飲んでみたが、その効果もなかった。ただ、その夜は一晩寝たら、翌日の日曜の朝には頭痛を感じなかった。Bさんにとっては頭痛が2日間も続かなかっただけでもいつもよりはましだったが、トリプタンが2度目に飲んだときには効かなかったことはショックだった。

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