頭痛専門外来での診察風景

(9)頭痛体操


「頭痛体操は、首の後ろの片頭痛圧痛点をストレッチし、その刺激で脳の痛み調節系を活性化するのが目的です。首の後ろからは頸髄神経が脳に向かい、脳幹で片頭痛の三叉神経系の回路とつながっています」 医師は先ず体操の目的を伝えた。
「もう一度片頭痛の圧痛点を押させて下さい。痛くて申し訳ありませんが、痛みを覚えておいて下さい。今の押された痛みの程度を“10”として、体操でどれだけよくなるかです」 医師は自信ありげだった。

1)頭痛体操の方法
「軽く両足を開いて立ちます。両腕を前方に伸ばし、手の掌は下にむけて、肘を半分曲げて下さい。正面を向いたまま、頭は動かさず、両肩を水平に大きく回します。頸椎(けいつい)を軸として肩を回転させ、頭と首を支えている筋肉(インナーマッスル)をストレッチします」 医師は自分も一緒に肩を回しながら、体操の指導を続けた。
「そう、顔はまっすぐ前を向いて、肩を回します。首が軸になります。力は抜いて、でも肩は大きく回して下さい。そう、首がコマの芯なり、そのまわりを肩が回っている感じです。片頭痛の圧痛点がストレッチされるのを感じながら、続けて下さい。いいですね、そう、上手です」
Aさんは、突然の体操に戸惑ったが、それでも熱心な医師に励まされながら、医師のまねをして体操を続けた。そのうち、体の回転がスムーズになり体操らしくなってきた気がする。
「はい、お疲れ様。初めてだと結構疲れますね。体操は2分して頂きます。いま、まだ1分ですが、ちょっと途中経過を見ましょう」

2)体操で片頭痛圧痛点がなくなる
医師は、Aさんを座らせ、体操の前と同じように首の後ろの片頭痛圧痛点を押してみる。
「いいですか、さっきと同じところを押しています。痛みはどうですか」
「痛くない、同じところを押しているんですか」 Aさんは、不思議に感じて確認した。
「さっき、覚えておいて頂いたところと同じです。ちょっと強めに押します。押された痛みはどうですか」
「ぜんぜん、痛くないです。魔法みたいです」 Aさんは狐につままれたような気がした。体操の前には飛び上がるように痛かったのに、痛みはほとんど感じない。強いていえば、10分の3くらい、まだ痛みを少し感ずる程度だ。
「体操で圧痛点がストレッチされ、そこから痛み調節系に良い信号が送られたのです。脳の痛み調節系が活性化されると、痛みへの敏感さが随分少なくなります。Aさんの痛み調節系はずっとさぼっていたみたいですが、まだ十分働いてくれます。頭痛、良くなりますよ」 医師は体操の効果の理由を簡単に説明し、Aさんを励ましながら、片頭痛の治療へと話しをすすめた。

(8)頭痛の診察(触診)
(10)片頭痛の治療薬
診察風景

H23.03.03.
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