B 頭痛専門外来の受診
(8) 前兆って、原因は何ですか?
「前兆が起こるのは脳細胞全体が過敏になり、あるとき突然その脳の一部が興奮状態になるからです。色々なことが前兆のきっかけになりますが、ほんの少しの誘因でも起こります」医師は、前兆の起こるメカニズムの説明をはじめた。
「例えば、ストレスから解放されたという変化が、脳の興奮のきっかけにもなります。『ホッとした』という気持ちが、脳では様々な変化を起こしています。脳内物質のセロトニンはとたんに減少します」
「脳にある後頭葉の小さな部分に興奮が起こり、その小さな興奮が波紋のように周辺に拡がります。静かだった池に小石が投げ込まれると、小石が落ちたところから輪を描くように水面をさざ波が拡がるのに似ています。さざ波は頂きと底とが交互の波となって拡がっていくように、脳細胞の興奮と抑制とが交互に起りながらに脳の表面を波紋のように拡がります。後頭葉は視覚の中枢なので、脳の興奮は視覚の異常と感じられるのです」
「それで、水車のまわりのギザギザした光が拡がっていくように見えたり、すりガラスのモザイクが後を追うように見えるのか」Bさんは自分にはこれまで全く不思議だった体験の真実が解き明かされるような気がした。
「後頭葉だけでなく、前頭葉に前兆の起こることもあります」
「前頭葉って?」
「話しをしたり、手足を動かしたりする脳の中枢です。その場合には、話しが出来なくなったり、手足の動きが鈍くなったりします」
「目の前にキラキラしたものが見えた後、言葉が思い浮んでこないこともあります」実際にBさんは損な経験もあった。
「そんなことが起こっても、脳は大丈夫なのですか?」
「片頭痛の脳の前兆は『皮質拡延性抑制』とよばれています。人の脳でおこる、片頭痛に特徴的な現象です。その結果、脳に障害が残ることはありません。脳自体は、遺伝的に活発とされていますので、脳の活動はほかの人より活発に働くと考えられています。脳に障害が残ることはありません」
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