B 頭痛専門外来の受診
(9) 前兆の後にくる頭痛は、どうしておこるのですか?
「それは良い質問です」
「分かってないんですか?」
「脳に起こった興奮は、そのあと脳の血管の周りにある三叉神経に伝わり、三叉神経から強烈な刺激を血管に送ります。CGRPという脳内物質が脳の血管を刺激します。脳の血管にはあたかもインフルエンザに直撃されたような強烈な炎症が起こり、血管は拡張し、痛みます」
「片頭痛はインフルエンザとおなしですか?」
「インフルエンザはウィルスが炎症を起こすのですが、片頭痛は三叉神経からの物質が炎症を起こすので、神経原性炎症と呼ばれます。炎症が強いところが似ています」
「インフルエンザはタミフルという薬が良く効きました。熱が39度もあったんですが、翌日には解熱したんです」Bさんはインフルエンザにかかったことがある。その時は5日間の出勤停止で、手持ち無沙汰だった。
「片頭痛の発作にはトリプタンという薬が良く効きます。ちょうどタミフルと同じ頃に開発されたメカニズムに効く薬です。今日は、トリプタン系の薬のひとつを処方しておきます。片頭痛が始まったら、出来るだけ早めに飲んで下さい。痛み止めではありません。片頭痛の火元を消す薬です」
「トリプタンですか?飲んでみます」
長い診察だった。医師は丁寧に説明をしてくれ、Bさんはありがたいと思った。
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